ハラール認証レストランを予約したのに、ムスリムのお客様が食べなかった失敗談

こんにちは。

 Al Majlis [マジュリス] の深澤麻衣です。Al Majlisでは、ムスリムの友人や仕事相手を食事に招待する方のためにハラールに関する情報をお伝えしています。

 

私は、イラク、リビア、ヨルダン、エジプト、UAEから100名を超えるムスリムのお客様のアテンド業務をしてきました。今回は、私が初めてムスリムのお客様をレストランに招待したときの失敗談です。これからムスリムの友人や仕事相手を食事に招待する方のために、私がやらかしてしまった失敗談を参考にしていただければ幸いです。

 

ハラール認証取得したアラブレストランを予約

2012年の秋頃、私は初めてムスリムのお客様をアテンドすることになり、アテンド中のレストラン探しをすることになりました。

お客様はイラク人10名。事前情報として「全員ムスリムのため、食事はハラールで対応してほしい」と伝えられていました。そこで、私は次のような基準でお店のリストアップをしました。

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ハラール認証取得済のレストランであること

「ハラール対応」というお客様からのリクエストがあったため、ハラールであることが明確に分かるほうが良いだろうと考え、ハラール認証取得済のレストランを探しました。

当時はハラールの認知度が今よりも低く、「ハラールレストラン」と検索をしてもエジプト料理やトルコ料理といったアラブレストラン以外の選択肢はありませんでした。ましてやハラール認証を取得したレストランとなると、東京23区内で20件程しか検索に引っ掛かりませんでした。

オーナーがムスリムであること

ハラール認証を取得していたとしても、お店スタッフがムスリムでないと信用できないだろうと考え、オーナーがムスリムであることも重視しました。

当日は、ハラール認証の証明書をお客様に見える位置に配置してもらい、ムスリムの店長からお客様に対して、食事はハラール対応していることを説明してもらうようにお願いしました。

臨機応変に対応してくれるお店かどうか

レストランに行く前に礼拝したいというリクエストがあることもあるだろうと考え、お店が当日の急な変更に柔軟に対応してくれるかどうかも考慮しました。例えば、キャンセル料を取るお店や、予約時間の変更不可または利用時間に制限があるようなお店は候補から外しました。 

ハラール認証レストランなら、ムスリムが食べれるという勘違い 

初日はほとんどの人が食事に手につけない

初日はイラク人10名を宿泊施設から一番近いアラブレストランへ連れて行きました。

事前にレストランの店長と打ち合わせしたとおり、机の上にはハラール認証取得したことの証明書が置かれています。お客様が席についてコース料理を振る舞う際には、エジプト人店長自らコース料理の説明をアラビア語でしてくださいました。

コース料理の説明が終わり、料理が目の前に並べられたので、私は「これはハラールですから、どうぞお召しあがりください」と伝えました。

ところが、お客様は注文したコース料理に全く手をつけません。10名のうち、3名程はパンやサラダ程度には手をつけるのですが、メインディッシュやスープには一切口にしないのです。結局コース料理のほとんどを残したまま、お店のオーナーにも申し訳ない気持ちでお店を去りました。

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翌日以降も食べてくれないお客様

2日目以降になると、食事に口をつける人が少しずつ増えてきました。それでも、そのうち2名は飲み物以外には一切口をつけず、宿泊施設に戻って自ら持参した軽食を食べているようでした。食事が十分に取れないために明らかに疲れたご様子で、滞在中に体調を悪くされないだろうかととても心配でした。

ハラール認証を取得しただけでは十分ではない

「ハラール認証レストランで手配しているのに、どうして食べてくれないんだろう?」アテンド中、私の頭の中は「?マーク」でぐるぐる…。当日のアテンド自体に不手際はなく、すべて順調に進んでいるはずです。

そんな私の様子を察知してか、1人のお客様から「いくらハラール認証を取ったと言われても、自分たちがそれがハラールと思わなければ食べないよ」と言われました。

「ハラール認証レストラン」と説明されて、Aさんは「これはハラール」と考えるのに、Bさんは「これはハラールではない」と意見が分かれることがあるのだそうです。ハラール認証とは、認証機関が独自に定めたルールに基づいて、イスラム教の教義に基づいてハラール(合法的)なものに対して認証しているものです。すなわち、ハラール認証はあくまでも1つの目安であって、ムスリムは個人の価値基準に従って「これはハラール」「これはハラールではない」と判断しているのです。

ムスリム同士でさえ、失敗することがある

この失敗経験を通じて、アテンド側として出来ることは、可能な範囲でハラールの食材で揃え、相手に自分はどこまでしたのか情報開示をすることであって、アテンド側が「これはハラール」と勝手に決めつけてはいけないということを学びました。

とはいえ、アテンド側としては食べてもらえないと悲しいですし、また栄養不足で体調を崩さないかと心配になります。実際に体調不良で病院に付き添ったこともありました。アテンド経験を積んでいく中でハラールに関する知識も増えてきましたが、お客様が召し上がらないときは、自分は信用されていないのかと自信をなくした時期もありました。

しかし、この話を聞いて考え方が変わりました。こは私の友人であるヨルダン人アラ君の話です。

彼は旅行で来日した際、家族のためにお土産を購入しました。チョコレートやスナック菓子など日本のお菓子は海外でも大人気です。家族に渡したところ、お母さんや兄弟姉妹は喜んで食べています。

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ところがお父さんだけはお菓子を食べません。彼が「どうして食べないの」聞くと、お父さんはこういったそうです。「お前は日本語が読めるかもしれない。だけど俺は読めないから何が入っているか分からない。だから食べないんだ」

息子のことが信用できないなんて、ひどいじゃないかと彼は怒っていました。何をハラール(合法的)と考えるかは人によって異なり、同じムスリム同士、それも家族でさえ、相手がどう解釈するか分からないことがあるのです。 

家族でさえ食べてもらえないことがあるんだったら、非ムスリムである私が用意したものを食べていただけなかったとしても仕方ない…お客様が食べてくれない経験を何度も繰り返してしまい、ムスリムのアテンドについて自信を失っていた私でしたが、自分が出来ることをやり続けようと思うことができました。